2011/03/07

Iron/Amino Acid Catalyzed Direct N-Alkylation of Amines with Alcohols

Dr. Yingsheng Zhao, Siong Wan Foo, Dr. Susumu Saito
Angew. Chem. Int. Ed., DOI: 10.1002/anie.201006660

アミンのアルキル化反応はアルキルハライドを用いた直接的なアルキル化や、還元的アミノ化による間接的な方法で通常行われる。簡便で信頼性の高い方法論であるものの、量論量の副生成物が生成することから環境調和性の面では好ましくない。近年ではアルコールをアルキル化剤とすることで、副生成物が水のみという反応が複数報告されている。これらは系中でアルコールのアルデヒドやケトンへの酸化、イミン形成、還元を経ることでアルキル化を実現している。本報告ではこのような系内での酸化還元を経ない、求核置換型の反応形式によるアミンのアルキル化反応に関するものだ。

著者らは検討によりFeBr3を触媒とし、rac-ピログルタミン酸を配位子、添加剤としてCp*-Hを用いて加熱することでアニリンとベンジルアルコールとの反応が収率よく進行することを見いだした。触媒なしでは反応はほぼ進行せず、配位子がないと低収率にとどまっている。またジアルキル化体はほとんど観測されていないようだ。


ベンジルアルコールは芳香環の電子密度によらず良好な収率でアルキル化体を得ている。アニリン側は電子供与基置換では収率が低下する傾向にあるようだ。またスルホンアミドが許容されるのはおもしろい結果だ。なおアニリン以外の脂肪族アミンでもアルキル化は進行するが、示されている基質が2級アミンのみであるため、モノアルキル化とジアルキル化の制御が脂肪族アミンでは難しい可能性がある。アルコールとしてはベンジルアルコール以外にも直鎖1級アルコール、2級アルコールも適応可能で、アリルアルコールを用いた場合も末端選択的に反応が進行している。このことは反応がカチオン経由ではないことを示唆している。

著者らはさらにD化基質との交差実験により、水素移動を伴う系中での酸化還元型の反応ではなく、Sn2型であると主張している。Cp*-Hの役割に関する記述が本文にないが、配位子というよりは触媒量のプロトン源としてアルコールの脱離促進をしている可能性が考えられる。

アミンのアルキル化は日常的には還元的アミノ化で行うことが多いが、還元剤として用いるNaBH(OAc)3などは分子量が非常に高く、基質よりも用いる量が多いことも度々である。そのため、もう少し廃棄物の少ない反応が開発されるとよいなと常々感じている人が多いだろう。本条件は反応温度があまりに高すぎる印象を受けるが、このような反応の開発には期待したいところである。

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